ヘルスプロモーション

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ヘルスプロモーションとは

ヘルスプロモーションとは、WHO(世界保健機関)が1986年のオタワ憲章で提唱し、2005年のバンコク憲章で再提唱した新しい健康観に基づく21世紀の健康戦略で、「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし、改善することができるようにするプロセス」と定義されています。「すべての人びとがあらゆる生活舞台−労働・学習・余暇そして愛の場−で健康を享受することのできる公正な社会の創造」を健康づくり戦略の目標としています。

逗子診療所では、ヘルスプロモーション活動として健康講話、健康に関する啓蒙活動を行っています。以前行った骨粗鬆症についての連載記事をどうぞご覧ください。

骨粗鬆症

  • どうして必要?骨粗鬆症の診断と治療

    現在骨粗鬆症の方は、1280万人もいますが、治療されている方はわずかに15%です。なぜなのでしょう?骨粗鬆症は、それだけでは痛みもありませんし、血圧などのようにすぐに数値で自覚することができないからかもしれません。
    しかしそれが元で、ひとたび骨折を起こすと、まさにその瞬間から痛い目にあうことになります。私の母は、大腿骨骨折を起こしました。私が夏休みで、旅行中の時でした。早朝不吉な音で鳴る電話を取ると、「ベッドから転倒して動けない、足が痛くて歩けない」と言うのです。すぐに救急車を呼ぶように伝え、搬送先の病院で骨折の診断を受けました。母も痛かったでしょうが、母に子育てを一任していた私も、目の前が真っ暗になったのを覚えています。身内の骨折で、私のような思いをされた方も少なくないのではないでしょうか?
    年齢を重ねると、癌や認知症といった病気が増えてきます。しかし、これらの病気は診断されたからといって、その場から生活が変わるというわけではありません。病気を受け止めて、どのように付き合っていくかという心構えをする時間が残されています。最近は私の外来にご夫婦で来られて、「先生、もう我々は癌の早期発見をしないでいただきたい」と言われることすらあります。高齢化社会になった今、癌の早期発見はしないで、自然に任せての生活設計をするという選択肢もありなのかもしれません。
    それに比べると、骨粗鬆症は早期発見を怠ると、骨折のリスクが増大してしまいます。大腿骨骨折の1件あたりの医療費はおおよそ140万円、骨折が原因で介護となった場合の5年間の平均費用は1540万円と言われています。
    ご本人がつらいだけではなく、家族も巻き込んでしまう骨折を起こさないために、これから骨粗鬆症の知識を身につけていきましょう。
  • こんな人が危ない!自分でも出来る骨粗鬆症チェック

    皆さんは、骨粗鬆症は女性に多い疾患というイメージがあるのではないでしょうか?そのイメージ通り、男性に対しては検査をおろそかにする傾向があります。実際に男性では骨粗鬆症の罹患率と骨折発生率は、女性の約3分の1とされています。しかし、高齢化社会の日本では220万人以上もの男性が骨粗鬆症を発症しており、治療を行わず重症化すると骨折のリスクが高まります。骨折後の死亡リスクの上昇や生活障害の度合いは男性の方が女性より深刻なので、注意が必要です。
    では、どんな人が骨粗鬆症になりやすいのか?についてお話していきます。
    まず、小柄で痩せている方、閉経している女性、運動習慣がない人、牛乳や乳製品が嫌いな人、家族に骨粗鬆症の人がいる、ステロイド薬を服用している、糖尿病や甲状腺の病気にかかっている、タバコを吸う、アルコールを沢山飲む人はリスクが高いと言われています。
    特に痩せている方は、筋肉の量も少なく転倒→骨折を招くケースが見られます。
    では、どんなサインがでるのでしょうか?
    まず、若いときに比べて身長が3cm以上低下している人は背骨を骨折している可能性があります。椎体骨折を起こしても3人に2人は無症状です。
    症状が進んでくると立ち上がるときに背中や腰が痛んで日常生活に支障が出てきます。重度になると痛みで寝ていることが多くなったり、重い荷物を持ったり、寝返りをしただけで骨折を起こすこともあります。
    将来の御自身の骨折リスクを把握することが出来るFRAXについて説明します。
    FRAX®(fracture risk assessment tool;フラックス)とは、WHO(世界保健機関)が開発した、自分自身で骨折発生のリスク(危険度)を判定することができる評価法のことです。対象は40歳~90歳の人。インターネットで公開されており、年齢、性別、体重、身長、骨折歴、喫煙の有無、アルコール摂取など12の質問に答えると、今後10年間の骨折発生の危険率が自動的に算出されます。この危険率が15%以上の場合には、骨粗しょう症の治療を開始したほうが良いと言われています。早期に治療を始めることが、骨折予防に繋がります。是非利用してみてください。
  • どうして起こるの?骨粗鬆症ライフステージから見た予防

    私たちの骨は、新陳代謝をしており、毎年1~4割が作り替えられています。骨は生涯にわたって、自ら古い骨を壊し、新しい骨を作るという事を繰り返しているのです。加齢や女性ホルモンの低下、生活習慣の偏り、遺伝など、さまざまな要因で、骨を壊す力が作る力を上回ると、骨粗鬆症が起こります。
    骨量が最大に達するのは、20歳の頃です。その後の人生は目減りする一方ですから、まずは20歳までにいかに骨量を上げておくかということが最大の予防―1次予防と言えます。
    若い頃に、骨の材料となるカルシウムやその吸収を助けるビタミンDを十分に摂る事や骨を鍛える運動をすることはとても大切です。骨は力が加わることで強くなります。適度な衝撃で骨を作る細胞が活性化し、骨密度をあげて強くなろうとするのです。ですから例えばそういう負荷のない、無重力の状態で過ごす宇宙飛行士は骨粗鬆症患者の10倍のスピードで骨がもろくなってしまいます。太っている人より痩せている人が骨粗鬆症になりやすいのもこのためです。骨量を上げるための最も有効な運動はジャンプです。お子さんやお孫さんから、スマホを回収して、是非なわとびをプレゼントしてあげてください。
    次に骨量が大きく変動する時は、女性の閉経後約10年の期間です。この時期は「骨の守護神」とも言うべき女性ホルモンの分泌量が一気に減るため、骨量が急激に減ってしまいます。ここをいかに維持するかが、2次予防となります。喫煙や過度の飲酒は、骨量の減少を助長します。糖尿病の方は骨の質が悪くなるので適切な治療が必要です。骨量が減っても、自覚症状はありませんから、定期的に骨密度をチェックする必要があります。早期に発見できれば、早期に介入することが出来ます。
    60代後半から、70代以上になってくると、骨量が若い頃の70%を切り、骨粗鬆症と診断される人が増えてきます。この時期の予防が3次予防です。食事、運動、生活指導に加え、薬物治療を行なう必要があります。そして「つまずく」「すべる」「段差に気が付かない」といった転倒原因に配慮した環境作りが必要になってきます。
    ライフステージに合わせて、上手に予防し、転んでも折れない骨作りをしていきましょう。
  • 骨粗鬆症の診断と治療

    さて、今回は診断と治療についてお話をします。骨粗鬆症の診断までには、幾つか工程があります。
    ・問診
    医師から骨粗鬆症に関する質問があります。現在気になっている症状に関すること以外にも、閉経時期や病歴、食事や運動、家族暦、生活習慣に関することなど様々ですが、これらは診断する上で大切な手がかりとなります。
    ・骨密度検査
    「骨密度」は、骨の強さを判定するための代表的な指標です。 骨密度検査では、骨の中にカルシウムなどのミネラルがどの程度あるかを測定します。 骨密度は若い人の骨密度の平均値と比べて自分の骨密度が何%であるかで表されます。


    骨密度検査は、骨の健康を知る上で重要な手がかりです。 特に女性は症状が無くても、40歳以上になったら定期的に骨密度を測ることをお勧めします。


    ・レントゲン検査
    主に背骨(胸椎や腰椎)のX線写真を撮り、骨折や変形の有無、骨粗しょう化※の有無を確認します。骨粗鬆症と他の病気とを区別するためにも必要な検査です。※骨に、鬆(す)が入ったようにスカスカになること
    ・身長測定
    若い時と比べて、3センチ以上縮んでいるのかは、骨粗鬆症を診断するうえでの指標になります。
    ・血液・尿検査
    骨代謝マーカーという検査により、骨の新陳代謝の速度を知ることができます。骨代謝マーカーは血液検査、尿検査によって測定されます。骨吸収を示す骨代謝マーカーの高い人は骨密度の低下速度が速いことから、骨密度の値にかかわらず骨折の危険性が高くなっています。 この検査は、骨粗鬆症を他の病気と区別するためにも行われます。
    ・診断
    骨粗鬆症は主に骨密度と骨折の有無によって診断されます。骨折は本人が自覚していない脆弱性(ぜいじゃくせい)骨折※の場合もあり、診断のためにはレントゲン検査が必要になります。
    ※脆弱性骨折:転倒、もしくはそれ以下のわずかな外力で生じた骨折


    骨粗鬆症の治療について
    骨粗鬆症治療の目的は、骨密度の低下を抑え、骨折を防ぐことにあります。治療の中心は薬物治療になりますが、骨粗鬆症の発病には、食事や運動などの長年の習慣も深く関わっています。そのため、薬物治療とともに食事療法や運動療法も並行して行い、骨強度を高めていくことが重要です。
  • 骨粗鬆症の治療 その1

    診断の次は、治療の話です。骨粗鬆症の治療薬の進歩はめざましく、大きく以下の3つに分かれます。(表1)どの製剤にも共通して言えることは、飲み忘れが多いと効果が無く、やめてしまうと骨密度は落ちていくということです。残念ながら、治療開始後1年で52%の方が薬を止めてしまうという報告があります。骨密度が上がるには2~3年かかります。定期的に服薬しないと、骨折を防ぐ事が出来ないばかりか、無駄な医療費が増えて、施設利用の必要性まで高まってしまうので注意しましょう。
    今回はまず、骨吸収を抑える薬(骨を壊す働きを抑える薬)について説明します。

    1、SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)
    骨代謝に関わるエストロゲンのバランスを調整して、骨量を増やす薬です。骨の強度は7割が骨密度、3割が骨質によって決まります。SERMは骨密度をあげる力は強くありませんが、骨の質を良くするという他の薬には無い特徴があります。長く飲み続けても大きな副作用は少なく、腎臓が悪くても使用が可能です。

    2、ビスホスホネート製剤(BP剤)
    骨に沈着し、骨を壊す破骨細胞を押さえ、骨密度を上げる薬です。腰椎、大腿骨ともにきちんとした骨折予防効果が認められており、現在最も多く使われている骨吸収抑制薬です。連日、週1回、月1回、年1回製剤があります。剤形も経口薬、点滴薬、静脈内注射、ゼリー剤があります。胃腸障害の副作用が出る人は、胃腸を通さず、血管内に点滴や注射で入れるといった工夫も出来ます。顎骨壊死の副作用が問題になりましたが、これはBP剤を使用していなくても発生します。口腔衛生状態を良好に保つことが最重要なので、歯科の先生と連携を取りながら治療をしましょう。長期間のBP剤服用時は骨が硬くなって、非定型骨折を起こすこともあり、漫然と飲むことは勧められません。3~4年経ったら再評価をし、主治医と継続の必要性を検討してください。

    3、抗RANKL抗体(デノスマブ)
    破骨細胞の分化と活性を押さえ、骨吸収を抑える薬です。薬剤投与後の効果発現が早く、骨吸収が強力に押さえられます。副作用として、低カルシウム血症が起こりやすいので、カルシウム、ビタミンD製剤などを飲む必要があります。半年に1回の皮下注射ですから、要介護の人や、認知症の方には使いやすい薬と言えます。


  • 骨粗鬆症の治療 その2

    薬は「骨の破壊を抑える薬」「骨の形成を促す薬」「骨の材料を補う薬」の3種類に分けられます。
    骨折の危険性が高い場合は、「骨の破壊を抑える薬剤」(ビスホスホネート製剤)が最も多く使用されます。(前回お話したお薬です)
    またいくつかの薬を組み合わせて治療することもあります。 骨粗鬆症の薬は、安全でしっかりと効き目が出るように飲み方が決まっています。
    いっしょに服用してはいけない薬や、飲んだ後に食事をしてはいけない場合もあります。
    必ず医師や薬剤師の指示通りに服用することを心がけましょう。

    <骨の材料を補う薬>
    1、カルシウム製剤
    カルシウムは骨の構成成分であり、骨にとっては必要不可欠な栄養素です。カルシウム摂取量が不足すると
    骨吸収(骨を壊す働き)が増加し骨量が減少します。カルシウム摂取不足、乳糖不耐症、胃腸の手術後などに使用され、多剤と併用する事が多くあります。副作用としては、胃腸障害や便秘があります。

    2、活性型ビタミンD3製剤
    腸からのカルシウム吸収を促進させます。骨を作る細胞を活発にし、骨吸収(骨を壊す働き)を抑制させ骨折の頻度を低下させます。筋力低下を防ぐ為、転倒予防効果も注目されています。カルシウム摂取不足、胃腸の手術後などの患者さんに使用されます。副作用としては、高カルシウム血症があります。特にカルシウム剤を併用している場合や腎機能が悪い方は注意が必要です。

    <骨の形成を促す薬>
    ヒト副甲状腺ホルモン製剤
    骨組織は「破骨細胞」が古くなった骨を溶かし(骨吸収)、そこに「骨芽細胞」が新しい骨を作って修復する(骨形成)というサイクルを繰り返して、骨の構造や強度を保っています。骨形成促進剤は、骨芽細胞の数を増やし骨形成を促進することで、骨の量を増やし骨を強くして骨折リスクを減らすことが出来ます。
    骨密度低下の強い骨粗鬆症や既に骨折を生じている重症の患者さんに適応があります。毎日自分で皮下注射する製剤と週1回外来で注射する製剤があり、いずれも使用できる期間が制限されています。

    年齢とともに骨をつくるより壊すスピードの方が早くなっていくのは生理的な現象です。
    食事、運動、日光浴、お薬やサプリメントなどを上手に取り入れ、「つくる」と「壊す」のバランスを整えましょう。食事はバランスよく、特にカルシウムとビタミンDは積極的に摂ることを勧めます。骨粗鬆症の患者さんに必要な摂取量は、カルシウムが800mg、ビタミンDが400~800IU、ビタミンKが250~300㎍とされています。食事だけでは足りない場合は、サプリメントなど利用するのも良いでしょう。
    カルシウムの吸収を高めるビタミンDは、日光浴によって皮膚でも作られます。夏は木陰で30分、冬は手や顔に1時間程度を目安にしましょう。